1年間のスキルUPの成果が「~の作業ができるようになりました」?

2014-09-07

どこの会社でも、期末、年度末には業績評価が行われます。その時の上司と若手社員とのやり取りです。因みに、若手社員の職務はIT企業のSE(システムエンジニア)。
上司   :「この1年間で自分に何が身に付きましたか」
若手社員:「~の作業ができるようになったことです」
上司   :「・・・・・」(言葉にいならない様子)
上司は、せめて「~の設計ができるようになりました」「~の技術が身につきました」というような回答を期待していたが・・・

この会話の中には、色々な問題が潜んでいます。
〇若手社員の視点から見た問題
・「仕事」と「作業」の違いが分かっていない。
※一つの解釈例ですが
仕事:背景にある何かを積極的に理解しながら、新たな価値創造に取組むもの
作業:与えられた指示に沿って何かを行うこと
・自分に期待されているものを理解していない。
・開発のためには標準が必要となりますが、その標準を作業手順としか受け止めていない。

〇上司の視点から見た問題
・若手社員に期待しているものを理解させていない。
・標準に基づき仕事のやり方を教育・指導していない。

これらの問題は、教育のやり方とコミュニケーションに大別できます。
〇教育のやり方
「標準化の目的は、品質を一定レベルに底上げすることにある」ということを忘れているのではないでしょうか。
最近は「スピード」「短納期」がますます加速し、仕事に余裕がなくなっている傾向にあります。当然のことながら部下への教育もあまり時間がさけなくなってきます。この結果、教育不足を標準化に転嫁し、膨大な標準化が出来上がってしまいます。社員は、要求を満たし、品質を上げるための標準化教育を十分に受けることなく、標準に書いてあることを理解するのが精いっぱいの状態になります。
悪循環です。「標準化が品質をおとす場合がある」典型的な例です。
もう一つの問題は、上司もこのような環境で育ってきているため、部下に教育できるノウハウがない可能性がある、ということです。また、上司、部下ともに社会人としての基礎的能力(社会人基礎力)は備わっているのでしょうか。

〇コミュニケーション
認識のずれを早期に発見することを怠っています。半年後、1年後に気が付くのでは遅すぎます。
コミュニケーションは、双方向で認識を一致させることです。この場合、期待していること、期待されていることをお互いの認識が一致するまで話し合うことが必要です。形式的に、半年、1年ごとにやっていたのでは、できるはずがありません。

このことは、社員の人材育成のやり方を見直す必要があることを示唆しています。
①まずは、社会人としての基礎能力を身に付けること(これが仕事のやり方の基本)
・考え抜く力(シンキング):疑問を持ち考え抜く力
・前に踏み出す力(アクション):一歩踏み出し、失敗しても粘り強く通り組む力
・チームで働く力(チ-ムワーク):多様な人々とともに、目標に向かって協力する力

②次に、発想・アイデアを育てること
仕事における問題解決のためには、発想・アイデアが必要になってきます。この文化を創らないと、問題発生の際も指示待ちになり、モチベーションが下がっていきます。

③次に論理的思考を身に付けること
①②の次に理論教育を受け、それに実践が伴って来れば、自己実現に向けて自分で成長していく可能性が高くなります。
入社後、ビジネスマナー、基礎技術、論理的思考に重点を置いた教育を行っている企業が少なくありません。①②が欠けると、教育を受けた内容を手順として理解するマニュアル人間が出来上がってしまいます。

最終的には、コミュニケーションの問題を解消し、目標を達成することありますので、それらへの期待は必然的に高まってくるでしょう。

Copyright(c) PANDP-LAB.COM All Rights Reserved.