現状から変革の芽を育てる3つの視点
「経営・組織」「人」「発想・アイデア」の3つの視点でイノベーションの芽を育て、イノベーションを目指すこと。これが変化に強い、持続可能な企業を目指すことになります。
「イノベーションの必要性は理解できる。とはいっても、現状の組織、人材のレベルでは無理と考えている」という企業は少なくありません。では、どのレベルになれば実現できるのでしょう。また、いつになれば実現できるのでしょう。多分、そのような企業は、5年経っても、10年経っても実現できていないのではないでしょうか。
時代は急激に変化しています。それぞれの産業では急激なスピードで産業構造が変化しています。この変化に対応していくためには、今からでも遅くありません。イノベーションは企業の大小に関係ありません。各々の企業の特性、強みに応じた変革へ活動を開始し、持続可能な企業を目指すことをお勧めします。
では、今から開始するためには、何をすべきでしょうか。現状(組織、人材)を見極め、人材を育成し、あるべき姿、達成するためのストーリーを描き、現状をベースに変革の芽を育てることです。それらを次の3つの視点で具体化します。
■視点1:経営者のお困りごとを解消する(金の出入りが見えない)
経営者に限らず、人の頭の中にはいくつかの「お困りごと」を抱えています。「お困りごと」は気がかりや悩みで、これはポジティブなチャレンジへの壁になります。イノベーションよりもまず喫緊の課題の方への問題認識が強いのは当然のことです。下記の対策は、組織の強みを引出し、組織の能力を強化することになります。
①第一は、ドンブリ経営によるストレス
儲かっていようが儲かっていまいが経営者にはお金の悩みはあります。売上を伸ばしたいという経営者の声も良く聞きます。将来どうなるのか見込みが見えない不安からくるものも多く、そのお悩みを紐解き、解決に導くことが必要です。
○会計(キャッシュを含む)不透明で赤字:収支構造に不安がある
○会計(キャッシュを含む)不透明で黒字:何から手を付けたらいいのか、優先順位など、判断基準がないことからくる不安がある
○会計(キャッシュを含む)透明で赤字:サービス力、商品力、営業力に不安がある
○会計(キャッシュを含む)透明で黒字:現状には問題ないが、将来に不安がある
②第二は、経営者と社員の立場の違いによるストレス(コミュニケーション・ギャップ)
立場の違い、世代の違い、経験の違いから認識、危機感のズレが発生するのは当然のことです。上位者、経験者になればなるほど自分の主観で伝えようとする、一方、受け手は、自分の経験と照らし合わせて理解しようとする。当然、捉え方は違ってきます。入ってくる情報量の違い、持っている情報量の違い、価値観の違いから多くのコミュニケーション・ギャップが発生します。これはゼロにはなりませんが、最小限に抑えることはできます。
コミュニケーション・ギャップを「見える化」して、そこを起点にコミュニケーションを図ることが、新たな製品・商品・サービスに繋がります。
③第三は、会社のビジョンが見えないストレス(ワクワク感がない)
「経営者の考えに周りが誰も共感してくれない、一緒に考えてくれない」といういう悩みで、「ビジョンを見つけたい、明確にしたいけど、何を目指したらよいのかわからない」と感じている人、「ビジョンを描きたいけど、現業に追われて手が回らない」と感じている人は多いと思います。
経営は、ビジョン⇒戦略⇒事業計画のステップで運営されます。戦略の良しあしは別にして、戦略がない企業はないと思いますので、まず現状の戦略を「見える化」して、周りの合意・共感を得るような動きを取ること。このような動きが、次のビジョンへの気づきにつながってきます。この気づき、ヒラメキを注意深き聞取り、吸い上げること。ここで重要なキーワードは、「共感」と「ワクワク感」です。重要なのは、会社の中で、仕事の中で「楽しみ」を感じることです。
■視点2:強みを生かして人材を育成する
学校教育と企業教育の一番の問題は、「底上げ教育」「受身教育(与えられる教育)」にあるのではないでしょうか。これは「平等の中の不平等」ということばに現れ、優秀な人材が育ちにくい環境になっていると考えられます。優秀な人材は、自分に投資することで成長しています。決して与えられた教育によるものではありません。
では、どのような教育・人材育成が必要なのでしょうか。
教育・人材育成の基本は、
①能力、スキルは仕事に中で身に付けるもの
②技術、知識は、自己責任の下で自らが磨くもの
③会社、組織が人材育成するのではなく、人材育成のための環境を提供する役割を担うもの
技術教育を先行させるのではなく、まずは、この意識を醸成する教育・人材育成が必要なのではないでしょうか。
このような教育・人材育成の実現は、人を知り、自分を知り、人が成長でき、能力を発揮できる環境が前提となってきます。
「この人は何が得意なのか、何に向いているのか」を知ることだと思います。この動きにより、「自分は関心を持たれている」という認識が生まれ、モチベーションの向上が期待できます。
人は、弱み、コンプレックスには目につきますが、強みは、自分ではなかなか気が付かないものです。自分では、当然のことと思っていることが多いからです。強みは、他と比較することにより認識できるものです。
人の「適性」「適職」「資質」を主観・経験から判断していては、この結果を共有できません。客観的に判断することが必要です。人材アセスメント等により客観的に「適性」「適職」「資質」を見極め、その結果を本人を含めて共有し、人材育成の方向性を話し合う、また話し合える環境を作り、強みを生かす方向を見つけ、本来の目的である経営目標を目指していく。このようなアプローチを実行していくことが、自律した人材を育成することになります。
■視点3:新たな発想、アイデアを創る
「売上減少」「売上増加」「黒字」「赤字」は会社の能力とみることができますが、一方では、社会が下した価値評価とみることもできます(ドラッカーの見方)。
○黒字企業は、今は好調だけれども、今後も維持できるのか、好調は長続きしないのか
○赤字企業は、今のやり方を社会から否定されているのか
赤字、黒字に関わらず、このような危機感を持ち、周辺の人との認識を共有するところから開始し、経営改革、所謂ビジネス・イノベーションを目指し、新しい価値(製品・商品・サービス)を創造し続けること。上からの掛け声、押し付けではなく、このような文化、環境を醸成する事が、持続可能な企業としての必要不可欠な条件となります。